葵 「な、なあ、やっぱりいいよ。あたしが可愛い服着たって笑われるだけなんだからさー。」
かすみ「だめよ葵、初めてのデートなんでしょ?うんとおしゃれして行かなきゃ。」
葵 「…あ、ああ…。」
かすみ「葵本当は可愛い服とかも似合うんだから、もっと自信を持った方がいいよ。」
とある土曜日の午後、駅前デパートに二人は来ていた。
葵が昨日、初めてデートに誘われたらしい…。
かすみ「ねえ葵、これなんかどう?可愛いでしょ?」
葵 「こ、こんなの、は、恥ずかしくて、着れねーよ。」
かすみ「じゃあ、こっちはどう?この服も可愛いよ?」
葵 「・・・なあかすみ。」
かすみ「ん、何?」
葵 「お前、自分の趣味で服選んでないか?」
かすみ「え、そ、そうかな?」
『あいつがいつも、かすみのことを「少女趣味」って言う気持ち、何となくわかる気がするな…。』
かすみ「ん?何か言った葵?」
葵 「あ、ああ、別に。」
かすみ「ねえねえ、あっちの方も行ってみない?」
葵 「あ、ああ、そうだな。」
…なあ、お前はどう思う?
やっぱり、あたしがおしゃれするのって、おかしいと思う?
そりゃそうだよな。髪も短いし、しゃべり方や性格も男勝りだし。
でも、本当はあたしだって、可愛い服着たり、お前と腕組んで歩いたりしたいんだぜ。
もし、あたしがそういうことしたら、嘘でもいいから
「かわいい」
って、言ってくれないかな…。
かすみ「葵、ほらこっちもかわいいのがたくさんあるよ。」
葵 「ああ、いま行くよ。」
・・・次の日、駅前には、昨日二人で選んだ服を着た葵がいた。
「は、波多野、お前…。」
葵 「や、やっぱ変だよな。あたしがこんな服着るなんてさ。」
「・・・」
葵 「じゃ、じゃあ着替えてくるよ。ちょっと待っててくれよ。」
「…可愛い…。」
葵 「…え?」
「なんだ、可愛い服もけっこう似合うんだな。一瞬誰かと思ったけど。着替えるなんてもったいないこと言うなよ、似合ってるよ、葵。」
葵 「・・・うん・・・」