思い出のハンカチ

璃未 「でね、その猫屋根から降りられなくなっちゃって、ブルブル震えながら30分かけてやっと降りられたの。」

直人 「え? じゃあ沢田さんずっと見てたの?」

璃未 「うん、応援しながらね。」

直人 「へー、健気と言うか暇と言うか。」

璃未 「あーっ、ひどーい。暇は無いでしょー。」

直人 「あはは、ごめんごめん。」

かすみ「あ、いたいた。直人くーん。」

直人 「おお、かすみ。なんだ?」

かすみ「はい、あなたのハンカチ。君ちゃんがあなたに渡してくれって。」

直人 「いいよ、別に拭かなくても大丈夫だしな。」

かすみ「えー、だめよ。ほら、せっかく君ちゃんが持ってきてくれたんだし。」

直人 「そういやお前って、まだあのペンギンのハンカチ持ち歩いてるのか?」

かすみ「え?うん、今日もそうだよ。」

直人 「相っ変わらず少女趣味なやつだな。」

かすみ「もう、またそうやってバカにしてー。いじわるなんだから。」

直人 「…まあ、折角お前が持ってきてくれたんだし、持つだけは持っててやるよ。」

かすみ「じゃあ、はいこれ。でもちゃんと拭かなきゃだめだよ。」

直人 「はいはい、じゃあなかすみ。」

かすみ「うん、バイバイ。」

直人 「? どうしたの沢田さん?」

璃未 「え?…ああ、幼なじみっていいなあって思って。」

直人 「そうかなあ?かすみなんかうるさいだけだよ。」

璃未 「でも、そう言ってる割にはまんざらでも無さそうなんだけど。」

直人 「ま、十何年の付き合いだしね、もう慣れたよ。」

璃未 「…幼なじみ、か…。」

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大輔 「りみ、ほんとにどっか行っちゃうのか?」

璃未 「うん、お父さんが言ってたの。来週から新しい家になるんだ、って。」

大輔 「じゃあ、お前だけ俺ん家に住め。」

璃未 「えー、だめだよー。私だいちゃんも好きだけど、お父さんも好きだもん。」

大輔 「…手紙、書いてやるからお前も書けよ。」

璃未 「うん、毎日書くよ。だから私のこと忘れないでね。」

大輔 「バカ!忘れるわけないだろ!!」

璃未 「うん…。」

・・・

璃未 「じゃあ、行くね。」

大輔 「・・・」

璃未 「じゃあね…。」

大輔 「・・・りみ。」

璃未 「なに?」

大輔 「俺、大きくなったらお前を嫁に貰ってやるから、それまで待ってるんだぞ。」

璃未 「・・・うん。

大輔 「声が小さい!返事は!?」

璃未 「はいっ!!!」

大輔 「だあ、もう泣くなってば!ほら、ハンカチ貸してやるから、早く行け。」

璃未 「グスッ、じゃあね、手紙書くから。」

・・・

大輔 「やっと行ったか…。だから早く行けっつったのに。もう少しで涙見せるところだったぞ。」

・・・

璃未 「だいちゃん、また、会える…よね…。」

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直人 「? どうしたの、沢田さん?」

璃未 「…え?あ、ううんなんでもないわ。さ、教室に帰りましょ。」

直人 「そうだね、行こうか。」

「大輔くん、元気にしてる?私が転校ばかりしてるうちに、手紙のやりとりも止まっちゃったね。

今日は謝らないといけない事があるの。私、ひょっとしたらあなた以外の人と結婚しちゃうかもしれないの。

…え?相手がいるのかって?それは、内緒よ、内緒。

…今度、会おうね。12年ぶりだね。あの時のハンカチ、覚えてる?あのハンカチも返さないといけないしね。

それじゃ、また手紙書くわね。」

またね。     璃未

璃未の心の行き先が、少しずつ直人に向き始めた、ある夏の日だった。


ここに気付かれた方、いかがでしたか?

実はこれは、Noritacさんへ送ったSSなのでした。

ウチに載せないのも何だなと思い、こっそり載せました。(爆)

作:ICEさん
オリジナル公開:199?年??月??日
ここでの公開:2000年8月10日